頭ん中の小宇宙

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📖刻まれない明日 感想📚

三崎亜記さんの本『刻まれない明日』読了ー

 

以下ネタバレありの感想↓

 

『開発保留地区――10年前、街の中心部にあるその場所から理由もなく、3095人の人間が消え去った。今でも街はあたかも彼らが存在するように生活を営んでいる。

しかし、10年目の今年、彼らの営みは少しずつ消えようとしていた。
大切な人を失った人々が悲しみを乗り越え新たな一歩を踏み出す姿を描く。

内容(「BOOK」データベースより)

「開発保留地区」―それは十年前、3095人の人間が消え去った場所。街は今でも彼らがいるかのように日々を営んでいる。あの感動から3年―“失われた時”が息づく街を舞台に描く待望の長編。』                       (Amazonより)

 

とまあこんな感じの本なのだが、物語の舞台は消えてしまったはずの人びとからラジオ局に手紙が届いたり、消えてしまった街から運行されるバスの光が見えたり、消えてしまった図書館の貸し出し記録が更新されたりする不思議な街である。

 

そこで人々が各々失ってしまった大切な人への想いを抱え生きていく話。

 

設定からして優しくも哀しい感じがする。

しかも物語を読んでいくにつれて次第に図書館の貸し出し記録が更新されなくなり、ラジオ局への手紙が減り、バスの運行がなくなっていってさらに哀しくなっていく。

ただ、文章自体がサラリとしているせいか、過度に重くならずに読めていて進みやすい。

 

残された人がどのように現実と向き合っていくかを何エピソードか重ねた後に、十年前の〈事件〉の真相がわかる。

 

十年前、町の地下にあった気化思念貯蔵プラントが爆発し、三千人以上の意識を奪い消失させた。街で起こっていた不思議な現象は、人々が見ていた幻想だということが分かる。

 

ええーーーっ何それ!😨

と、思いつつもちゃんと真相に理屈で説明できる設定を持ってきてくれたことに、納得。

 

この本、設定が面白いし何より読みやすいと思っていたら、作者の三崎亜記さんの本を前にも何冊か読んでいた。

街とか建造物と人との物語を多く書く人で、設定がそういう視点から来たのか―と思うような面白い設定が多かった。それで、どことなく優しいけれどそこはかとない哀しさを漂わせた雰囲気のお話を書かれる方だなーと思っていた。もう、めちゃくちゃタイプの作風。

 

また図書館で何冊か借りてみようと思う。

 

https://www.amazon.co.jp/gp/product/439663322X/ref=dbs_a_def_rwt_hsch_vapi_taft_p1_i4